遺言
遺言
1.遺言とは
遺言とは,自らの財産の死亡後の承継に関する意思表示のことを言います。最終の意思となりますので慎重な取り扱いが求められることから,遺言としての法的な効力を生じるためには民法に定める方式に従わなければならないとされています。 遺言がなかったために相続紛争が激化するケースが少なくありません。仮に紛争が生じても,明確な意思に基づく遺言さえあれば,解決の方向性が定まります。 残される相続人のためにも遺言書を作成することを強くお勧めします。 |
2.遺言の方式
遺言については民法に定める方式に従わなければならないとされており,その方式としては,自筆証書遺言と公正証書遺言が一般です。 まず,自筆証書遺言についてですが,要件さえ備わっていれば,遺言としては公正証書遺言と完全に同じ効力を有します。 その要件とは,遺言者が,①遺言全文と②日付と③氏名を自筆し,④押印することとされています。 ①については,遺言者の自筆で記述する必要があり,代筆はもちろん,ワープロで作成することも認められていません。誤字や脱字の訂正についても厳格な要件が定められています。 ②の押印については,必ずしも実印である必要はありません(もっとも,実印の方がベターでしょう)。 これらに不備があれば,遺言としての効力が全くなくなる危険性もありますので,自筆証書遺言による場合でも,弁護士によるチェックやアドバイスをお受けになることをお勧めします。 つぎに,公正証書遺言ですが,公証人が関与して遺言書を作成するというものです。証人二人以上の立会いを要し,また公証人に支払う手数料も必要です(手数料額は遺産の規模などによって違います)。 ただ,公正証書遺言の方が自筆証書遺言に比べると,事後に遺言の効力が争われるリスクが格段に低くなります。 |
3.遺留分
民法上,法定相続人には「遺留分」というものが認められています。基本的には,各自の法定相続分の2分の1が各自の遺留分となります(ただ,法定相続人が父母などの直系尊属のみの場合は,相続財産の3分の1がその遺留分となります)。
例えば,法定相続人がAという配偶者とB及びCという2名の子の場合,配偶者のAには相続財産の4分の1の遺留分が,子のBとCには相続財産の各8分の1の遺留分が,それぞれ認められます。 この遺留分は,遺言によっても奪うことができないのが原則です(ただし,被相続人に対して著しい虐待や侮辱を加えた者については相続人から廃除する手続が定められています)。 もっとも,この遺留分を侵害するような遺言も有効です。例えば,上記の例で,「Aに全ての遺産を相続させる」という遺言も有効です。 ただ,遺留分を侵害されたBには「遺留分の減殺請求権」というものがあり,この権利を行使して遺留分を主張することになります。具体的には,内容証明郵便などで減殺請求するという意思表示をした上で,減殺を求める調停を申し立てるなどします。 なお,被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。 したがって,例えば,法定相続人が配偶者と兄弟姉妹しかいない場合,全ての遺産を配偶者に相続させる旨の遺言をしておけば,兄弟姉妹は(遺言の効力を争わない限り)「何も言えない」ことになります。 |
よくある相談例
■遺言書を自分で書こうと考えています。どのようなことに注意すべきでしょうか? → 2 ■遺言は公正証書の形にしておく方がよいと聞きましたが,やはりそうなのでしょうか? → 2 ■「遺留分」に反する遺言は無効ですか? → 3 |